国家公務員の実名ブログ
実名・所属を明らかにして業務に密着したことを書き、毎日更新して、1年半も続いているブログがある。3週間で閉鎖に追い込まれたブログ が話題になったのをきっかけに書いておく。
はてなダイアリーで開設されている 食品安全情報blog。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部主任研究官の 畝山智香子さん がやっている。
安全情報部は、ヒトの健康に関わる情報を収集して厚生労働省の政策に生かしたり国民に情報提供することが業務だ。畝山さんは、業務の中で集まった情報の一部をこのブログで個人的に公開している。情報の範囲は食品の安全に関わる様々な事項(ダイオキシン、重金属、天然成分、食習慣、etc.)、情報源は、主に海外の論文、政府系サイトなど。膨大な記事が毎日発信される。
私が 分析化学のページ でこのブログを紹介したのは、開設されて間もない頃、2004年10月だった。その後2005年1月に、日経BPのコラム 松永和紀のアグリ話 でも、 食品安全関係者必見!お役立ちブログ として紹介された。
これだけ息長く続くとは、失礼ながら一年半前には思ってもいなかった。掛け値なしにすごい。
このブログが関連業界の人たちにとってどれほど有用かは、松永さんの上記記事に詳しく書かれているので繰り返さない。私は、このブログのスタイルについてちょっと書いておく。
- 公開情報の引用のみで構成
- ブログ開設者の主観はあまり書かない
- コメント欄はあるが目立たない(畝山さんはこまめに返信している。)
- フルネームと所属はブログには書かれていない
- 一見するとどういうサイトかわからない
こういった特徴が、公務員の立場でも支障を起こさず、「炎上」などとは無縁に続いている秘訣だと思う。このブログを読む人の多くは、検索でアクセスする人たちだろう。「食」についてちょっと不安なニュースを聞いた時、日本語で検索して英語の情報源と簡単な解説がヒットする。これは非常にありがたいことだ。そういう一般消費者の人たちは、このブログがどんな素性のものかは知らないまま読み、去っていくのだろう。
一方で、畝山さんの所属や業務内容を知った上で付いている固定読者もいる。それは、松永さんや私の紹介文を読んでこのブログを知った一部の人たちであり、業界の玄人たちだ。
本来、国の機関が情報発信するとなると(たとえ単なる引用でも)正確さの精査のためにかなりの時間と労力が費やされるが、個人の情報発信ではそれほどのコストがかからない。もし畝山さんが公開しなければ、収集されるだけで広範囲の人の目には決して触れないであろう情報群が、ブログによって日の目を見ている。
国家公務員の情報発信、こういうスタイルもあるということを紹介してみた。
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