経産省部長の「炎上」ブログ続報(朝日新聞)
経済産業省の谷みどり消費経済部長のブログが約3週間で閉鎖に追い込まれた件について、朝日新聞夕刊2006年3月14日付け科学欄(記者席)にコメントが掲載された。科学医療部次長 高橋真理子「専門家の発信、生かせる環境に」という署名記事。筆者の主張が述べられている部分を引用しておく。
だが、そもそもPSE法の広報は経産省の仕事であり、それが不十分だったことは当の経産省も認めている。足らざるを補う努力がなぜ職務でないのか、不思議である。
情報の自由な流通を可能にしたインターネットは、一方で無法地帯といわれてきた。管理する者はどこにもおらず、悪意の情報もいくらでも流せる。善意の書き込みが思わぬハレーションを起こすこともある。
だから、インターネットとの付き合いは慎重を期した方がいい。ただ、忙しい専門家が発信するのにこれほど便利なメディアもない。自らの知識と経験をもとに、社会の関心事をわかりやすく語る。使命感に基づくそんな活動が自由にできない環境は、何とも情けない。
私は、個人サイトで所属組織の政策の広報をすることは「職務」でないと思う。
その組織内でブログを広報に利用することを決め、担当者を選んで任せたなら「職務」だ。しかし、個人の判断で開いたブログが「職務」になり、勤務時間中に堂々と更新されるとしたら、ちょっと待ってくれと言いたい。
そのようにして発信された情報の責任はどこにあるのか。突き詰めれば個人の判断でしかないものが、組織のお墨付きを受けたものであるかのように受け取られるのではないか。
この問題については2年以上前にウェブ上で一大議論になり、相当多くの人たちが意見を述べた。火元になった徳保隆夫さんは、まとめページ 専門家の情報発信 を作っている。
私の意見は 「専門家は個人の責任で情報発信するな」について:補足 に集約されている。組織のお墨付きでやるなら、企画として提案し、手続きを踏んで決裁を受けるべきだ。お墨付きを取るのが面倒なら、徹底的に個人の責任で(個人の時間とお金で)やるべきだ。どちらなのか見分けのつかない情報が飛び交うのは、納税者として納得いかないし、生活者として安心できない。
今回の「炎上」事件に関して私が注目したいのは、谷部長が勤務時間中の更新をとがめられて「職務専念義務違反」としてだけ注意を受けた点である。
「組織の人のblog」過去ログ で書いたとおり、組織の人が個人的に情報発信すること自体が問題視される可能性もあると思ってきた。しかし、少なくとも経産省は、私が上記記事に書いたようなもろもろの懸念は表立って問題にしていないようだ。このことは、「組織の人のブログ」史上、画期的だと思う。
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● 谷みどり嬢、ブログ「谷みどりの消費者情報」問題で大臣官房から注意を受けていた(Garbagenews.com)
● 珍しく国会や役所のことに胸を痛めたこと(境真良(実名登録)の日々是雑感)
● 役人の情報公開は支援する方向で (事象の地平線)
● 谷みどりさんとPSE法(END_OF_SCAN)
● 公務中に個人ブログ更新~経産省キャリア(閑人斎の一刀両断)
● ブログという場について考える(tata日記)
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Comments
トラックバック先にあげてある境真良さんは、
早稲田の先生になりました。
早稲田大学大学院国際情報通信研究科 客員助教授です。
Posted by: tadashi | 2006.05.10 08:33 AM