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2004.06.10

「ネット世代論」を「匿名性」とスッパリ切り離してみる

 梅田さんの インターネット世代論 は、ネットが絡む色々な事件や現象を解き明かすのに役立ちそうだと思う。その際、「匿名性」とは意識して切り離してしまうのがいいのではないか?と考えてみた。

 「インターネットといえば匿名性」な感じの議論が多い。最近の例を挙げれば、木村剛さんの サイバーワールドとリアルワールドの戦いが始まる(日経BizPlus)があるし、小学6年生の女の子が同級生を殺害した事件に絡んでも、「ネットの匿名性」を問題にする意見をよく見かける。

 私は、「ネットの世界」の本質を説明するのに匿名性は不可欠でないと思う。だから、たとえば社内LANでも「ネットな人」は出現しうるし、最小単位、つまり、2人だけによる密なメールのやり取りにおいてさえ、「ネットの世界」は形成されうると思う。(実際、私はそういう世界に3年ほど居続けたことがある。)
 逆に大きいほうへ想像を働かせれば、インターネットの世界から完全に匿名性が抹消されたとしても、「ネットの世界」の本質は変わらないと思う。(もちろん、匿名性がもたらしている特質が非常に大きいことも論を待たないが。)

媒体に情報がプールされる仕組み
 リアル世界から一応独立した媒体に、いったん(あるいは継続的に)情報がプールされる仕組み。こういうものを自分の生活空間として入り込み、その世界での人格を形成できるのが「ネット世代」ではないか。
 その際、構成員どうしのリアル世界での接触の有無、立場の違い、好き嫌いなどは、もちろんネット世界での人間関係に影響する。しかし、毎日顔を合わせる間柄であってさえ、リアルの関係とネットでの関係は同じものにならない。いや、同じものにしようと極力努力するのは「ネット以前の世代」と言える。そういう世代は、ネットの世界でもリアルの制約に縛られた必要最小限の発言しかしない(できない)。よって、ネットの世界で遊ぼうとか生活の場にしようとか、つまり、ネットをリアル世界と別の価値を持つ空間として理解しない。

 情報がいったんプールされる仕組みは、ネット以前からも「サークルノート」「理科室の机の落書き」などの形で存在した。でも「生活空間」と認識できるほどになるには、頻繁にアクセスできることや情報入力に手間がかからないことなどが必要で、そういう環境は近年になって急速に普及した。

 こういう媒体を介すると、なぜ「もう一つの世界」が出現してしまうのか。私はコミュニケーション論の専門家でもなんでもないが、「自分の言いたいことを最後まで言える」のが最も大きいと思う。リアルの会話では、言いたいことを全て言える場面はあまりない。途中でさえぎられたり、相手の顔色を見たり、ちゃんと聞いてもらえなかったり、色々な理由で発言は中断される。(あるいは、そもそも発言できない。)そして、発言の受け手にとっては、「相手の発言に途中で文句をはさめず、全部受け取らされる」ことになる。
 たったこれだけの違いだが、人間どうしの関係に決定的な違いをもたらすように見える。

「もう一つの世界」がある・続くという信頼
 で、私は、「インターネット世代」でなく「ネット世代」と呼んでおくほうがしっくり来るような気がする。もちろんインターネットはキング・オブ・ザ・ネットで、他のネットとは比べようもない影響力を持つものではあるけれど。
 それから、「ネットの向こうの不特定膨大多数への信頼」とは、第一に「この世界が永続すること、自分と同じくらい真剣にこの世界で生活している他者がいることへの信頼」ではないかと思う。嘘つきよりは本当のことを教えてくれる人のほうが多いとか、親切な人も意外に多いといった信頼感、あるいはここで生きる自分のリテラシーへの信頼感は、この世界の存在を受け入れる過程で身についていくものではないか。

 付録として、「デジモノに埋もれる日々」の記事 私たちがネットを通して見ているもの・築いていくもの の向こうを張って、匿名性と切り離した「ネット人」の踏み絵を考えてみた。(匿名性をキーにした踏み絵のほうがわかりやすいとは思う。リアルの影響を排除したネット世界の価値を各人がどう捉えているか、純粋系で知るには、匿名という方法しかないから。)

 A.あなたは、空いた時間があればとりあえずネットに接続していますか?
 B.あなたは、ほぼ習慣的に「次にupすること」「いつかupすること」を探していますか?
 C.あなたは、ネット内での自分の位置や他人からの評価が気になりますか?

 私は全部「Yes」です。

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