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2004.05.21

平林純さん「史上最強科学のムダ知識」を読んだ

 もう2ヶ月も前のことになるが、 「役に立たないように見えること」 の記事から多数のアクセスがあって驚いた。いったい何故この日記からこんなに人が来るのかと、前後何週間かぶんを読んでみたが、よくわからなかった。
 先日、書店で「著者・平林純」とある本を見かけ、あ、この人だ、と思ったので買い求めた。カバー絵や内容紹介の雰囲気は、私が普段読んでいる類の本とはかなり違う。( bk1amazon

 一気に読んでしまった。納得した。なぜ平林さんのhirax.netが人気を集めているかを。
 もしかしたら、hirax.netを知らないなんて言ったら、技術系サラリーマンとしてモグリだと言われるほどメジャーなのかも?
 知らなかったのは私だけなのかもしれないが、一応紹介。

>毎日眺めるワイドショーや色んな景色の中に満ちあふれる「さまざまな謎」を強力な(無駄なほどの)科学の馬鹿力で解決する!?色んな話が入った本です。

 これが著者自身による本の説明。そして、本はhirax.netで公開されたものの中から選りすぐりを集めたもの。まったく、「科学の馬鹿力」という言葉がぴったりしている。「さまざまな謎」を、その重みと不釣合いに大仰な法則や公式やコンピュータ技術を使って解明する、アンバランスさが面白い。

 こういう世界には既視観があるなあ・・・と辿ってみると、そう、学生時代だ。私は薬学部だったが、理学部の学生とも関わりがあり、人となりがだいたいわかるくらいの付き合いだった人が20人か30人くらいはいる。そのサンプル数の範囲での印象ではあるが、理学部の学生が複数いると、ほんのくだらないことで小難しい理論を使った議論が始まって、「おおっ、そうか。ここにも○○の法則が成立していると。」「ついに○○論が予測しなかった域にまで人類は達したと。」等々のもっともらしい話へと発展するのだった。(最後に「と。」で終わる話し方も思い出した。当時の流行だったのか。)
 そうか。卒業してもあれを続けている人がいたのか・・・。(しかも学生の戯れ言レベルよりはるかに高度だ。論理構成も投入資源も。)

 そう言えば「物理帝国主義」という言葉も存在した。物理系は、化学系よりも生物系よりも数学系よりも断然態度が大きかった。(これは私の印象にすぎません。)今また再認識した。天体も人体も、「タレントの人気」までも、物理の手法ではモデル化して解析できてしまう。

 一見ムダみたいなことを手間ひまかけてやる人たちがいるなーという感想は学生時代から持っているが、そういうムダみたいなことが社会的に結構評価されることも知っている。ただし誰でも評価されるわけでなく、「ムダだけどすごい、面白い」と感心させるか、「何か飛躍的な発明や発見が生まれる土壌になりそうだ」と期待感を持たせなければならない。つまり、才能がなければ、見向きもされない。
 私にはそういう才能はないので、狭い分野でほんの少し役立つことを積み重ねていく地道な路線を歩んでいる。分析化学に携わるみなさんへ:サイト開設のお誘い みたいな感じで、何らかの専門家であれば誰でもできることを考えている。

 hirax.netの人気のもう一つの秘密として、平林さんの嫌味のない語り口、育ちのよさといったパーソナリティがあると思う。
 しかし、「『史上最強科学のムダ知識』を全部読んだ」と公言するのは、やや恥ずかしかったりする。「育ちのよさ」と「恥ずかしい内容」が両立しているのもまた味がある。(というより、両立させなければ堂々と売れる本にならないのか。)

 とりあえずhirax.netから何か読んでみたい気になった人への私のお奨めは 14ミリグラムの「いろんな気持ち」
だ。一般的には 私と二度めに出会う「水」 の視点のほうがウケそうな気がするが、化学屋のこだわりとして「14ミリグラム」の方が好き。
 リンクするのははばかられるが、力が入っているのはこのあたりという一例は モンロー・ウォークの伝説X 。もっと力の入っているテーマもあるけれど、ちょっとタイトルを書けない。

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Comments

14ミリグラムの「いろんな気持ち」、では無いですけど、僕の怒りや悲しみは、毎晩アルコールで抽出されて、翌朝、排泄されていくのかもしれません。
そして、楽しみや喜びだけ残るのです。
多少の頭痛を伴うときは有りますけど。

Posted by: 聞きかじり | 2004.05.21 at 05:57 PM

聞きかじりさん、こんにちは。
「楽しみや喜びだけ残る」のは、いい飲み方ですね。
アルコールは、微生物たちが酸素を使わずに「気持ち」を吐き出した残りですから、
 C6H12O6 --> 2 C2H5OH + 2 CO2
きっと、樽の中で彼らが感じていた色々な楽しみや喜びも、ほのかな味わいとして混じっているのでしょう。

Posted by: ここの管理人 | 2004.05.21 at 08:30 PM

もう一つおまけに「史上最強科学のムダ知識」、おもしろかった!!

確かに「14ミリグラム」は、いい!! 人生を見直す名文だ。

もちろん、モンローウォークの動きまで再現している凝りようには、脱帽です。


あああ~~~ぁ、あんなサイトを目指したい・・・・・・。

あんな面白いサイトを紹介してくれてありがとう。

週末にゆっくり読んでみようっと。

Posted by: ホーライ | 2004.05.21 at 08:38 PM

 ホーライさん、こんにちは。ホーライさんのサイトは、また違った味を出していますよ。現在、「ホーライ製薬」の社員さんは39人もいらっしゃるようですね。こういうスタイル、他の業界でも可能でしょうが、中心になれる人材は、そうそういないと思います。

Posted by: ここの管理人 | 2004.05.22 at 05:41 AM

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