ハンドルネームの人は実名の人を批判してはダメなのか
麻弥さん の メモ(5/11付け) で、私の記事 「匿名か実名か」が意味を持つ条件 に対する質問をいただきました。
たしかに、専門情報のやりとりについては、実名でないと混乱を招くことはあるだろうなあと思います。
ただ、「他人を批判する場合」において、「筆名」ではダメなのでしょうか。私は「筆名」を長年使用していますが、私には批判を行う権利はないでしょうか。
ご存じない人のために紹介させていただきますと、麻弥さんはネットワークでのセキュリティに関して初心者にもわかりやすい解説を数多く書いておられて、私もいつも参考にさせてもらっています。特に メモ には幅広い最新情報が集積されています。また、最近の 日記 では、【「実名」と「筆名」と「匿名」と。】のタイトルで何回か書いておられます。
本題ですが、「権利」という言葉でくくれば、言論の自由として許されている範囲は非常に広いと思います。極端な話、民事・刑事での訴訟で違法とされない限りすべて「権利」と考えられるかもしれません。
でもたぶん、普通のネット市民が関心を持つのはそんな極端な事態ではなく、「マナーや道徳として非難されるような行為かどうか」あたりでしょう。この観点から考えてみます。
結論から言えば、ハンドルネームの人が、特に権力や名声を持たない実名の人をあまり激しく批判していたら、ちょっとどうかと思います。
まず、批判されること自体のダメージ。内容をよく読まずに文章の雰囲気だけから悪印象を抱かれる場合も多いでしょう。実名だと友人や仕事の関係者にも批判を読まれる可能性があるのに対して、ハンドルネームの人は安全圏に隠れています。
また、日本社会では、批判自体がどんなに正しくても、「批判する」という行為自体に何やらマイナスイメージがあります。ネットでは「批判」は人気を博しますが、実生活ではそうじゃないでしょう。実名を出さないということは、実生活においてこのマイナスイメージから逃れていることを意味します。
さらに、何回か書きましたが、正体のわからない相手から批判されるのは、非常に気持ちの悪いものです。身近に起こらないと実感できないかもしれませんが・・・。
一方、批判対象が権力者や著名人や大きな組織の場合は、発言主が実名でもハンドルネームでもあまり関係ないと思います。
また、実名の人が先にハンドルネームの人を批判した場合は、ハンドルネームの人だって反論や反撃をして当然だろうと思います。それができなければフェアじゃありません。それと、いったん議論を始めたなら、途中で「相手が匿名だから」と言い出すのは卑怯だと思います。
というわけで、何の手も出していない実名の人に対してハンドルネームの人が批判をした場合、実名の人が「相手が実名を明かしていない」ことを理由に無視したとしても正当だと私は考えます。
ただし、匿名での批判であっても、内容自体は理にかなっている、という場合は少なくありません。批判を無視するとしても、自分の発言内容に問題があったと認識したら自発的に修正するのがよいと思います。
以上はあくまで私個人の考えで、これが世間一般の常識だとは思っていませんし、他の人に勧めるつもりもありません。
2004/5/20 追記
匿名の功罪(室井佑月blogより)。-タイのまいにち にトラックバックしました。
2004/7/3 追記
木村剛さんの 匿名から特名の時代へ にトラックバックしました。「実名 vs ハンドルネーム」の差について、現在の私の考えはこの記事に集約されています。
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