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2004.05.28

ネットで実名を名乗るための危機管理

 ネットで実名を名乗るのはなんとなく怖い・・・と感じる人は多いと思う。
 では、実際、どんな怖いことが起こるのか?私も実名を名乗っているから、この点には興味がある。しかし、意外に「こんな怖いことがあった」の例は、あまり見つからないし、自分自身も経験がない。時おりニュースになる「匿名の中傷メールが多数届いた」等の被害は、ネットで実名を名乗ったからというよりは、リアル社会で実名が知られている人の話ばかりだ。

たとえばこんな危険
 現実に起こったということでなく、頭の中で想像を働かせたらこんなことが思い浮かぶという例をまず。たとえば、Java House メーリングリスト での「匿名かハンドルか」の議論の中で、ハンドルネームの人によって こんな懸念 が書かれている。

・勤務先等に「この人物には問題がある」という趣旨のメールが送られる。
・メールのFrom欄に私のアドレスを記述し、勤務先や個人的に関わりのある人に対して誹謗中傷するメールを送ったり猥褻な画像を送ったりされる。
・同様のメールを送りさらに「意見があればいつもで聞いてやる」というような文言とともに住所や電話番号を併記される。
・同様のメールが個人的に関わりのある人の縁談相手に送られ破談になる。

 この懸念に対する他の参加者(実名)の発言は、
勤務先等に「この人物には問題がある」という趣旨のメールが送られるような投稿は、そもそもすべきでない
住所や電話番号まで晒したらさすがに危険だと思うが、実名を出すだけのことにどれほどの危険があるか
例示のようなリスクを享受してでも本名で堂々とポストしていない発言など、信じるほうがリスクがある
といったものだった。

検索の怖さ
 また、実名をキーとした検索によって自分のネット上の言動がトレースされてしまう危険もある。麻弥さん が、 ネット上で実名を使うことの危険性について で詳しく書いておられる。今後は、Googleでヒットしないような過去のページまでアーカイブされて日本語で検索できるようになる可能性があるとのこと。
 検索に関しては私もかなり注意を払っている。本館のサイト名に氏名を入れているせいか(今では入れなければよかったと思っている)、氏名で検索してくる訪問者が毎日数名はいる。
 週に2回程度自分の氏名で検索を掛けて最初の3ページくらいをチェックしているし、時々は全ページのチェックもする。私の氏名は、平凡なようでいてネット上で同姓同名があまり見つからない。
 こういうチェックの結果、個人情報が掲載されているのを見つけて削除依頼を出したことが2回ある。前の職場の組合のホームページと、以前所属していた音楽サークルのホームページだ。(情報内容はたいしたものでなかったが。)
 麻弥さんは、氏名での検索によって「自分が書いた内容が、あまり知られたくない人に知られてしまう」危険を挙げている。私は、そもそも読まれたくない相手が存在することは書かないようにしている。私の本館サイトを見てメールをくれたり、会ったときに話題にしてくれた同業者は50人以上になる。これだけの人たちが、少なくとも一度は訪問してくれたと意識していると、学会会場で名札を付けているとき程度に自己の言動をコントロールできる。

貴重な体験談
 実名でたいへんな目にあった貴重な体験談が、Artaneさんのコメント で書かれている。ネットストーカーが「勤務先のネットワークを荒してネット上にぶちまけた」「詰腹を切る形で会社を辞めさせられた」「ストーカー対策で周囲から数年間沈黙を強いられた」とのこと。たいへん参考になるお話だ。そういうことまで起こりうる、と知っておくほうがいい。
(「勤務先のネットワークを荒らす」の意味が不明なのはちょっと残念。ハッキングのことか、勤務先の公開掲示板を荒らしたということか。あまり詳しくきいてはいけないような気がするのでききませんでした。)

私が実践している危機管理
 単に「自分の名前がインターネット上にある」という人の数は、激しい勢いで日々増えている。仕事関係ばかりでなく、何かの賞を取ったとか、任意団体の役員をしたとか、寄付をしたとか、果ては懸賞で当選した場合まで、実名が出る機会は今後も限りなく増えるだろう。
 実名がネットに出ること自体が危ないわけでなく、その実名に伴う情報や感情が問題なのだと思う。私自身が注意していることを挙げてみる。

 まず、匿名が主流のコミュニティには参加しない。今や、ほとんどの公開掲示板はハンドルネーム主流になっているから、掲示板には滅多に書き込んでいない。
 それから、批判をしない。特に匿名の人には 反論もしない。これらは、主な理由は別のところにあるのだが(詳しくはそれぞれの記事で書いている)、危機管理の意味もある。
 「特別な執念を持たれる」きっかけは主に「感情的な応酬」にあると思われるから、そういう応酬に至る可能性をできるだけ減らすようにしている。

 何の応酬もしていなくても「偏執的な興味の対象になってしまう」場合があり得る。これは、いったいどんなことがきっかけになるやら、見当もつかない。常識の範囲外の心理から起こることだから。
 まず実践していることとして、性別は非公開。と言ったら笑われてしまいそうな名前だとは思うが、とにかく私の性別は非公開。プロフィール欄には全く書いていない。(どこかで、語るに落ちることは書いているかもしれない。)私の性別を知っている気でいる皆さんは、思い込みでそう考えているだけですから、そのおつもりで。
 それから、身体的なことを連想させる文章は書かない。健康状態すら書いていない。生身の人間というより、情報提供者としてのみ認識されたい。
 家族関係は書かない。女性の場合、一人暮らしとわかるのは少し危ないかもしれないし、家族に女性や子供がいる場合も、描写することによって変な興味を持たれてしまうかもしれない。全然色気のない描写であっても、説明できないのが嗜好というものだから。
 リアルな生活に結びつかないようにする。自宅や職場がどのあたりにあるか推定できることは書かないし、生活時間帯がわかるようなことも書かない。(例えば「一人暮らし女性&帰宅時間が遅い」という情報は、危険を招く可能性がある。)アクセス解析に抵抗を感じるのも、このあたりに一因がある。

危険を避けることにより逃すメリット
 こういう用心を重ねると、ネットで発信できる情報は、あまり面白味のない固いものに限られてしまう。「批判しない」と最初から宣言している書き手なんかに興味が湧くだろうか。また、ある程度の個人情報の開示は、人間味のある自分を表現するために必要だろう。
 私は名前が売れても全然トクにならない(しかも小心な)サラリーマン的立場だから、きわめて用心深い。極端な話、クロマトグラフィーや精度管理に興味のある人しか読まないサイトでもかまわないと思っている。
 上記のことは、幅広い読者を集める人気サイトをめざす書き手にとっては、まったく参考にならない話だったかもしれない。

参考リンク
 Tokyo Forumの blogが全て、はマズイだろ にトラックバックしています。実名・匿名に関係なく、blogで何もかも書いてしまっていいの?という話。

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