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2004.03.14

小心なサラリーマン専門家に何が書けるか

 本館 のページは、あくまで分析化学を主題とするサイトの一部で、読者も私に似た立場の人が中心なんだろうなと思いながら書いてきた。でもこのblogを始めて以来、違う業界の人とばかり話をしている。どうも、いちいち断らないと色々誤解を生みそうだ。
 私は、小心なサラリーマン専門家に向けて書いている。つい人目が気になって、法的または道義的に問題のない行為まで自己抑制してしまう、そういうサラリーマン根性をあえて否定せずに、サラリーマン根性の根源を見つめ、その枠内でできそうなことを提案したいと思っている。
 サラリーマン根性そのものがけしからん、打破しろ、という意見があることも理解できる。そういう主張のほうに興味がある人も多いだろう。そんな方は、こんなせこいblogは無視して、もっと大胆な面白いサイトを読むほうが精神衛生上いいと思う。

 ところで、小心なサラリーマン専門家にいったい何が書けるのかという今回のタイトル。実名で専門知識を公開するための工夫 で書いているけど、
 (1) 既に公開されている情報
 (2) 自分自身の研究対象への愛着
だと私は考えている。(1)は素材に関することで、(2)はサイトの主題に関することだ。

「愛着」を表現することについて
 専門情報を扱うサイトを運営する楽しみとして、「検索で拾われて誰かの役に立つ」「リピーターになってくれる人もいる」ことを私は挙げている。こう書くと、知識そのものをネットに載せることに意義を感じているのかと取られるかもしれない。実は、ちょっと違う。
 今やどんな分野でも、専門情報の体系は膨大だ。その一部といえども、個人の力で網羅的に掲載して維持管理するのは不可能に近い。どんなにがんばっても、ネットに載せられる情報は全体からすればごくわずかだろう。だから、知識をファイルにすることそのものを目的にしたら、きっとすごく疲れるだけだと思う。
 私は、自分の知識の中から適当なひとかたまりを取り出してまとめ、それを通じて「面白いな」とか「そうだったのか」を表現したいと思っている。ただし、読者に何も新しい情報を提供しない文章では読んでもらえないから、素材選びには工夫している。幸い、分析化学の分野にはあまり書き手がおらず、今のところ素材には事欠かない。

公開情報のみを使うことについて
 他人の書いた公開情報はいいけれど、問題は自分が書いた公開情報だ。下手をすると1次情報と見なされる可能性がある。私は、自分の書いたものを2次利用するという方針でやっている。つまり、公開情報を寄せ集めて誰にでも書ける文章しか書いていない。(ただし一人称になるし、個人的な感想は入れているが。)
 フタル酸エステルに関して私たちの研究班が発表した情報は、実際数多くの書き手によって2次利用された。論文の引用文献としてだけでなく、新聞とかテレビとか業界紙誌とかNPOのホームページとか。当時化学物質情報部におられた大竹千代子さん(現在 化学物質と予防原則の会 代表)は、研究班に対する情報提供と行政措置までの過程をまとめて博士論文の一部になさったくらいだ。(このこと自体は光栄だと思っています。)
 このように誰にでも利用できる情報が自分にだけ利用できないとすればおかしな話で、他人にできる程度は私もやっていいだろうと考えている。ただし、決して「裏情報」や「ここだけの話」は書かないし、結論的なことは公式見解と一致することしか述べない。

 というわけで、かなり細かい話になったが、今回は個人ページに書く内容について私見を述べてみた。

関連リンク
あらきけいすけさんの業務日誌(3/10付け)
『議論の中で「1次」「2次」の区別がいまいち曖昧じゃないかという印象がある。』と書かれていますので、ちょっと考えをまとめてみました。1次情報は論文として発表するまでは秘密にしないと・・・いきなりウェブで書く気前のいい研究者は、あまりいないのではないでしょうか。

三中信宏さんの日録(3/11付け)
 三中さんは小心じゃないですね。ウェブで書くのは「自分のため」と言い切れるかたですから・・・。
 自分の思い通りに表現してそれが世の中にも認められるという生き方は、大多数の人にとって憧れの対象だと思います。思春期の頃に、マンガ家やタレントになりたかったという人は多いでしょう。
 ただ、サラリーマン暮らしも、けっこう居心地がいいんですよ。少なくとも私には。そういう気持ちが文面に表れていて、だからサラリーマン的な規範を主張しているみたいな印象があるんだろうなと思います。

「役に立たないように見えること」
 平林純さんのblogより(3/6付け)。「うるさいこと」を書く私がいる業界の場合 がお返事になっているかと思います。平林さんにはそれほど過激なことを書かれたわけでもないのに「儀礼的無関心」という言葉が思い浮かぶくらいアクセスがあり、ちょっと怖かったので、今ごろこっそりとリンク。(「儀礼的無関心」は比喩として出しただけで、私のサイトはリンク自由です。)

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Comments

 一連の「私がブログを書く理由」「書き手の属性をどこまで明らかにするか」「公開する情報の質」などの議論の流れを興味深く拝見しました。私は小心なサラリーマンの部類に属する人間なので特に(笑)。「書く理由」や「本人の属性」は、ブログの本流とは別の要素なので、心の内にしまってさらっと流される方が多いのですね。しかし、特定の情報の広報ツールとしてブログを使う場合、書き手がどのようなフィルタに通して情報を選択しているのかは、読み手の気になるところでもありました。今回の議論で、各ブログのスタンスの違いが明らかになった気がします。

Posted by: mocho | 2004.03.16 at 01:40 AM

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