個人ページ内で自分の所属先を書くことについて
私はけっこう「ウェブ上で実名を名乗るか名乗らないか」を区別して考えているけれども、「それより所属先を書くか書かないかのほうが重要だ」という見方もあるかもしれない。このことについて、少し考察してみる。結論としては、私は個人ページを開設して維持していく上で、所属先を書くか書かないかは、実名を書くか書かないかよりもずっと小さい影響しか持たないと考えている。
その最大の理由は、所属先を名乗ったことによって個人が何らかの責任を取らされたという話を聞いたことがないからだ。虚偽の身分を称して相手を信用させた場合には詐欺罪に問われたりするけれど、真実の身分であれば、少なくとも法的な罪にはならないと思う。(私が知っている一般常識の範囲ではということだが。)
ときどき、会社や業界団体や職能団体にとって不名誉なことをしたからという理由で辞職したり除名されたりする人がいるけれど、それは、その人がそれらの団体の一員と名乗っていたことが問題視されたわけではなく、団体の一員であるという事実そのものが問題視された結果だ。
日常生活で初対面の人に自己紹介するとき、仕事に関係のない付き合いであっても自分の所属先を名乗ることはよくあることで、個人サイト内のプロフィール欄に所属先の名称が書いてあっても、別に問題はないと思う。
違いが出てくるのは、所属先が書いてあれば個人ページの内容と所属先とを関連付けて解釈される可能性が高くなるという点だろう。書いてなければ、わざわざ調べない限り所属先との関連の付けようがないのに対して、所属先が書かれていれば、会社名で検索した人にまで関連がわかってしまう。でも、こういうのは印象や可能性の違いに過ぎないと思う。
一方、「論文や学会発表をしておらず、有名でもない個人の氏名は、実名かどうか確かめようがない」というのも現実的な話だ。この場合は、実名を書くかどうかよりも所属先を書くかどうかのほうが意味が大きそうにも見える。
でも、「仕事内容+実名」だけ書いても、少なくとも身近な人には所属先までわかる場合が多い。(よほど就業人口の多い仕事&同姓同名の多い氏名という条件が重なれば別だけど。)それに、オフラインの付き合いがある同業者とのリンクができてくれば、最初は無名の人であっても自然にネット上での存在証明が固まっていく。つまり、現時点で自分は無名だと考えている人にとっても、実名を出すということは相当に重いことだ。
そういうわけで、私は「実名を書くか書かないか」は重視するけれど、「所属先を書くか書かないか」はあまり問題にしていない。私にとって関心があるのは、サラリーマンができるだけ精神的な負担を感じずに専門分野に関する個人ページを開設するための方法論で、その中で言えるのは、所属先名を書かないほうが負担は少ないだろうということだけだ。
参考リンク
araiさんのコメント
私の文章について「組織名を明示している人とそうでない人の区別がきちんとされていない」と問題視しておられるので、この記事はこの方の疑問に答えるために書いた。
最近の環境ホルモン報道
市民のための環境学ガイド 2001年1月21日付け記事。すぐれた個人ページとしてよく挙げられる安井至氏のサイトのポリシーを示す文章が、末尾近くに書かれている。所属先とは一線を画して個人としての見解を発表するという立場。
C先生:なかなかそこまで社会的責任を自覚している研究者は少ない。今回の新聞に名前のあった方々では、話題にしなかったが臭素系ダイオキシンの国立環境研の遠山氏は、ページを持っておられる。大分前になるが、井口先生にちらっとそのことを言ったら、「そんな暇はない」、と一蹴された。暇がないことなら、私も大抵の人に勝てる。井口先生ともよい勝負だと思うが。
ただ、個人で意見を述べようとする場合、大学のURLを使用しないことが一つの見識かもしれない。洗剤のページで有名な横浜国立大学の大矢先生のところの掲示板が相当熱かったようだし。最近では、個人でWebを作るのにも余りお金が掛からないよい時代になったから。
それから、「市民のための環境学ガイド」の冒頭には次のように書かれている。
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