2019.09.29

巾着田のヒガンバナ

東京勤務半年。日本で最も有名かもしれないヒガンバナの群生地が埼玉県にあると聞いて行ってきました。


Kinchaku1

日高市の巾着田です。
ヒガンバナの見ごろはソメイヨシノよりも短いと思いますが、ちゃんと見ごろに行けるかな?と心配していました。
運よく今年は開花が遅かったらしく、週末では昨日・今日が見ごろだったようです。
昨日(9/28、土曜日)は七分咲きから満開といった感じで、最盛期は月曜か火曜かもしれません。
巾着田にはヒガンバナがこれでもかというくらい咲いていました。500万本あるそうです。こんなに多くを一度に見たのは初めてです。
それよりも圧倒されたのが観光客の多さ。そして迎える側の準備が整っていること。
ヒガンバナといえば、毒があるのでモグラ除けとして田の畔に植えられたという説もありますが、私の子供の頃の記憶では、大人たちが積極的に大事にしている様子はありませんでした。
本当に真剣にモグラを遠ざけたいなら畔全体にヒガンバナが生えていてもよさそうなものですが、あくまで田園風景のそこここに点在するもので、雑草の一つという認識でした。
ヒガンバナはそういう取るに足らない花で、夏の草刈りの時期に葉がないから切られずに済んでいるだけと考えていました。
そのヒガンバナが積極的に守られるばかりか、駅から群生地までの道端や民家の庭先にも、そこかしこに咲いていました。
そして群生地に隣接する広場には特設ステージが設置され、何十も屋台が並んでいました。民家が開店したにわかショップも多く、いなり寿司や手作り小物や野菜などを販売していました。
人出はこの時期だけで30万人だそうです。
取るに足らない秋の田のアクセントでしかないと思っていたヒガンバナがこれだけもてはやされる場所があるとは、カルチャーショックでした。


Kinchaku2 Kinchaku3

私はヒガンバナが好きで、過去に何回かこのブログで観察記を書いたことがあります。
巾着田のヒガンバナは花自体も人の営みも想像以上のものでした。人が多すぎてゆっくり味わうどころでありませんでしたが、河原が広がる地形や木製の美しい橋が良かったです。
ヒガンバナの葉が茂る冬の景色も見たくなりました。冬なら静かに散策を楽しめるでしょう。

過去記事


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2019.05.24

サイレントチェンジとバーチャルタンデムMS(!)

今回のキーワードは「サイレントチェンジ」、そして「バーチャルタンデムMS」です。

先の土日に北九州市で開催された第79回分析化学討論会に行ってきました。
学会名の看板を撮影するのは忘れましたが、これは会場(北九州国際会議場)の外観です。小倉駅直結の便利な場所で海に面しています。当日はあいにく低気圧が近づいていて強風が吹いていました。

Photo

産総研計測標準研究部門の津越敬寿さんとは2年前に分析化学会近畿支部のセミナーで知り合ったのですが、とても面白い着想をする方で、3回もこのブログでネタにさせていただきました[1-3]。今回も何か面白い話が聞けないかと、懇親会でお姿を探しました。

期待通りうかがうことができた話によれば、
「最近サイレントチェンジが問題になっています」
とのことです。
サイレントチェンジ? 初めて聞きました。

製造業で、納品される部品や原料の素材がこっそり安いもの等に変更されることだそうです。メーカーが知らない間に耐熱性や絶縁性が変化するのですから、重大な事故やリコールに結びつきかねないと、素人にも想像できます。
検索したら経済産業省が2017年にウェブサイトを作って注意喚起していました。
サイレントチェンジに注意

いかにも分析化学の出番です。津越さんたちはサイレントチェンジへの対策としても使用できる質量分析計について発表するとのことだったので、ポスター[4]を見に行きました。
内容は、以前から津越さんたちが研究しておられる「イオン付着イオン化(IA)質量分析法」[2]に関することです。今回のポイントは、IAに加えて電子イオン化(EI)と光イオン化(PI)も可能な、3つのイオン化法を兼ね備えた質量分析計を試作したことです。筆頭発表者の三島さんの許可をいただいて装置構成図を掲載させていただきます。

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3つのうちIAとPIは同時測定が可能、さらにEIでの測定も行うことで、試料に含まれる有機化合物を網羅的にスクリーニングできるとのことです。こちらはスペクトル例です。(上からIA、PI、EIのスペクトル、EIについてはNISTライブラリから)

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津越さんによれば
「僕は『バーチャルタンデムMS』と呼んでるんですよ。IAでリチウムイオン付加分子を見て、PIでフラグメントイオンが見られます」
とのことでした。

なるほど!
PIについては、
「GC/MSで手軽に分子イオンが見える」
との触れ込みに期待したものの、フラグメンテーションが起こる物質も少なからずあることにやや失望した経験があります。PIとIAが同時に可能であることを利用して、PIで起こるフラグメンテーションを逆に役立てるという発想ですね。

で、本当に「バーチャルタンデムMS」と呼べるかについては、額面通り受け取るわけには行きません。タンデムMSでは質量分離した後のイオンをさらに壊すのに対して、この試作装置は分離せずに壊すわけですから。

でも「バーチャルタンデムMS」という呼び名にはちょっと浮き立ちます。同じ呼び方は、開裂の程度が異なる測定を組み合わせた手法全般に対して可能です。
GC/MSのイオン化電圧は70 eV固定の機種が多いですが、LC/MSでは可変の装置が多いですよね。シングルのMSであっても、低い電圧でイオン付加分子を、高い電圧でフラグメントパターンを、同時に観測することが可能です。
最近廉価で取り扱いが簡易なシングルMSが出てきていますが、これを「どうせシングルMS」と考えるか「バーチャルタンデムMS」と考えてみるかで、装置の値打ちが違って見えてきませんか?

「そうだ バーチャルタンデムMS、やろう。」
と思って装置に向かえば新しい発見があるかもしれません。また津越さんから面白い話が聞けた学会でした。

ところで会話でのMSの発音は「マス」です。この件についても当ブログで書いています[3]。

[1] 「技能試験」「標準物質」の用語に疑問(2017.05.27)
[2] GC不要論!?(2017.06.18)
[3] 質量分析(計)のことをマスと呼びたいっ!(2018.01.10)
[4] 三島有二, 津越敬寿「有機化合物の迅速スクリーニング分析のためのダイレクトインレットプローブ-マルチイオン化質量分析装置の試作開発」第79回分析化学討論会, 2019.5.18-19, 北九州市

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2019.05.12

東京へ転勤&国立衛研旧庁舎

4月から東京で勤務しています。このブログで「〇〇へ転勤」のパターンの記事を書くのは4回目です。

せっかくの東京暮らし、休日に行ってみたい名所旧跡が多数あります。生活に必要な店や公共施設はだいたい押さえた今、さてどこから行こうか・・・と考えて、ふらっと足が向いた先はここでした。

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現在は川崎市へ移転した国立医薬品食品衛生研究所の旧庁舎です。
かつて就職活動は夏から始まりました。将来への期待と不安を抱いてこの門をくぐりました。

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逆光になってしまいましたが門を入ってすぐ左手にある守衛さんの建物です。外来者はここに備え付けられた記録簿に氏名や来訪先を記入することになっていましたが、採用後は「大阪支所からです」と言って通過していました。

敷地外周に沿って歩いてみました。歴史を表すうっそうとした木立に囲まれています。

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都市計画局による見取り図の表示がありました。用務先以外には行ったことがありませんが、実はずいぶん広いようです。

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門の右手には「衛生材料廠跡」の碑があります。かつてはそのような名の施設があったのでしょう。いずれは「国立医薬品食品衛生研究所跡」の碑が並ぶのかも?

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旧庁舎の所在地は世田谷区上用賀、最寄り駅は東急田園都市線の桜新町。サザエさんの町として知られる場所で、駅前にはこんな像があります。

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実は私は国立衛研の大阪支所が廃止されて敷地に草が生い茂り、解体されて更地になるまでの写真を掲載したページを作っています。
一種の廃墟マニアかもしれません。和歌山薬用植物栽培試験場の閉鎖直前の様子も記事にしています。

世田谷区の旧庁舎が更地になった頃に、また訪れるかもしれません。

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2018.09.22

分析化学会&質量分析学会 合同講演会

Godosympo 9月12~14日に仙台で開催された日本分析化学会第67年会に行ってきました。

部分的にしか参加できませんでしたが、聴講した一つは14日の日本質量分析学会との合同講演会です。私は両方の学会の会員になっており、両者がどのような関係を持とうとしているのか興味がありました。

時間は1時間で、両学会の歴史や研究領域などについて、質量分析学会の高山光男会長及び分析化学会の岡田哲男会長が、それぞれじきじきに講演されました。そして最後に産総研の津越敬寿さんが両学会の組織や学術集会の開催方法、用語の違いなどについて講演されました。

どちらの学会も会員数が減っているとのことで、合併の話題も上がりました。しかしそれはうまく行かないだろうとのことで、雑誌の編集やイベントの共同開催などで協力していくそうです。また岡田会長によれば、分析化学会には現在21もの研究懇談会があるのに質量分析研究懇談会が無いので、設立を模索したいとのことでした。研究懇談会は外部への窓口の役割も持っており、無いと不都合だそうです。

意外だったのは、質量分析学会の設立が分析化学会のわずか1年後、1953年だったということです。失礼ながら、そのように歴史のある学会とは知りませんでした。私が日常的にGC/MS装置を使い始めたのは1980年代後半。質量分析は数ある分析法の中でも新しい手法だと思っていました。

しかしよく考えてみれば、質量分析そのものの始まりは100年以上前と教科書に書いてあったような・・・

質量分析学会の歴史が長いというより、むしろ分析化学会の歴史が短いと言えるかもしれません。なにしろ分析化学の歴史は化学の歴史と言ってもいいくらいなのですから。

日本化学会の設立は1878年だそうです。分析化学会は、日本化学会会長であり日本学術会議会長でもあった亀山直人氏の強い要請により1952年に設立されたそうです。
翌年に質量分析学会が設立されたわけですが、いずれも日本で戦後の復興と発展が加速しつつあった時代のニーズに応じたものだったのでしょう。
これまで知らなかった学会の歴史を学べた講演会でした。

なお、コーディネーターの津越敬寿さんは両学会でご活躍で、当ブログでもそのユニークな御意見を3回も記事にさせていただいています。

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2018.09.11

分析化学会の女性Analyst賞をいただくことになりました

公益社団法人 日本分析化学会が今年から「女性Analyst賞」を新設し、最初の2名の受賞者の一人に選んでいただきました。たいへん光栄で恐縮しています。
明日から東北大学で開催される第67年会で授賞式があります。
表彰内容は ぶんせき2018年8号 に掲載されていて、ウェブでも読むことができます。
これまで一緒に仕事させていただいた皆様、推薦してくださった分析化学会近畿支部の皆様、その他たくさんの関係者の皆様に深謝します。

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