2023.09.21

本の紹介「人生は化学反応・化学変化」

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私は著書でメールアドレスを公開しているので、時々読者の方から質問メールが送られてきます。2019年3月頃、丸山晴男さんという方から分析機器に関する質問をいただきました。 たまたま共通の知人がいることがわかったため、何回かメールのやり取りをし、持っておられる私の「よくわかる最新分析化学の基本と仕組み」は初版の方だったので、第2版を送らせていただきました。その後も時々メールの往来がありました。丸山さんがこのほど本を出版されたのでご紹介します。

 丸山晴男さんについて
略歴は版元の書籍ページに書かれています。(Amazon等の書籍購入リンクもあります。)
人生は化学反応・化学変化(幻冬舎ルネッサンス)
岐阜県内の中学校・小学校・高校で42年間教諭や講師をされてきました。そのかたわら、自宅に「恵那エネルギー環境研究所」と「恵那ライブ気象台」を開設して研究活動や学校以外での教育活動を続けて来られました。

丸山さんの研究所と気象台には、太陽光発電システム、2種類の風力発電システム、太陽熱利用給湯システム、気象自動計測システム、ネットワークカメラ、放射線計測システムが設置されているとのことです。詳しくはウェブサイトに設置状況の写真などがあります。
恵那エネルギー環境研究所 総合 Web

また、丸山さんが講師を務められたオンライン市民講座の動画で、講義の様子がわかります。
食品の秘密(恵那市公式チャンネル)

 熱意ある実践の軌跡
「人生は化学反応・化学変化」で一貫しているのは「研究をしたい」「それを教育に生かしたい」という熱意で、自宅研究所を開設してだんだん充実させていった経緯や、活動ノウハウ、人生訓、それらを学校内外での教育で伝えてきたことなどが熱く語られています。

丸山さんの大学・大学院時代の専攻は応用化学科とのことですが、運営しておられる研究所は化学とはあまり関係がないようです。教職に就くため地元に戻る時、試験管、ビーカー、フラスコ、分液ろうとなどをそろえて持ち帰ったそうですが、個人で化学系の研究を続けることは難しく、模索の末に、発電システムや計測システムを使う研究をすることにしたそうです。
高額なシステムを設置するために自動車の買い替えを控えて中古車に10年以上乗っているといった裏話も書かれています。

また、本のタイトルにも表れていますが、人間関係をとても大切にされています。学生時代や仕事で出会った人ばかりでなく、メーカーへの問い合わせやメールで知り合いになった人に至るまで、人間関係を財産として捉えておられる姿勢に、特に学ぶことが多いと思いました。

 オリジナルの誌面デザイン
この本の版元は文芸書を得意としていて、理系の本はあまり扱っていません。そのため、誌面デザインは一から構築する必要があり、なかなかたいへんだったそうです。その際に「分析化学の基本と仕組み」を参考にされたとのことです。これは出版社が何百冊も出しているシリーズ本の一つで、誌面デザインは出版社が作ったものです。でも、似たような誌面のマニュアル本は多数の出版社から出ているので、参考にしたからといって問題にはならないでしょう。でき上った誌面は随所にベンゼン環が描かれている2色刷りで、すっきりしたオリジナルなものになっています。

「人生は化学反応・化学変化」の最後の方に「研究・活動協力機関,協力者」のリストがあり、私の氏名も載せていただいています。人間関係を大切にする姿勢を形にされたのでしょう。私は、最初に分析機器の質問にお答えしたということはありますが、これまでのメールでは出版や執筆に関するやり取りの方が多かったです。そんな話も参考にしていただけたのかもしれません。

 こんな人におすすめ
最後に、どんな方にこの本をおすすめできるか書きます。
間違いなくおすすめできるのは教育関係の方でしょう。教育実践の事例がいろいろ書かれているからです。
ただ、私自身は教育関係者ではないので、この本に書かれていることの新規性や有用性は判断できません。恵那エネルギー環境研究所ウェブサイト には講座メニューなど掲載されていますので、教育関係の方には判断できるのではないでしょうか。また、これから教員を目指される方には、自分の生き方のモデルとしても考えられると思います。

教育関係以外では、こんな人の参考になると思います。
 ・本業のかたわら研究をしたいと考える人
 ・エネルギッシュな生き方に触発されたい人
 ・個人で書籍を出版したい人
ただし「研究」については、普遍的に参考になるかどうかわかりません。というのは、論文リストを見る限り丸山さんの研究は教育実践に関するものがほとんどだからです。様々な機器を使用した計測・観測の結果どんな新しい発見があったかについてはこの本に書かれておらず、計測や観測の実践を教材として利用したことが書かれています。つまり、教材以外の目的で研究をしたい人にとっては、テーマの設定法など成果に直結するノウハウが得られるとは限らないかもしれません。

研究と教育にかける熱意、また、そのような半生を書籍という形にすることへの熱意が伝わってくる本です。そんな生き方に触発されたい皆さんに、本当におすすめです。

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2023.08.07

「ゼロから学ぶ 分析法バリデーション」

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分析法バリデーションに特化した学習用書籍、20年ぶりの刊行です。20年前に出た本は試薬会社による発行でしたから、出版社によるものとしては初めてではないでしょうか。価格が高めなので、購入判断のための情報が欲しいと思っている方がいるかもしれません。そのような方にも役立つように内容を紹介したいと思います。

 本の概要
「ゼロから学ぶ 分析法バリデーション」
香取 典子/著
2023年7月25日 発行
B5判 136ページ
6,600円(税込)

じほう社による書籍紹介 (概要、目次、序文を掲載)

42ページまでが本文で、ICH Q2に沿った分析法バリデーションの解説です。次にAppendixとして統計的な解析の解説が16ページ、用語解説が9ページ、資料編(ICH Q2(R2)分析法バリデーションガイドライン案、第十八改正日本薬局方第一追補よりクロマトグラフィー総論とシステム適合性)が56ページという構成です。

 ICHって何?
私のブログの読者で医薬品分析をしている人は少ないと思うので簡単に説明します。
ICHとは「医薬品規制調和国際会議」の略称です。医薬品の承認申請のルールを日米欧の3極間で調和させる活動をしています。詳しくは下記を参照してください。

ICH 医薬品規制調和国際会議 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)

ICHでは色々なガイドラインを合意していますが、それぞれのガイドラインには記号が付けられています。例えば品質に関するものにはQ、安全性に関するものにはS、有効性に関するものにはEといった具合です。
Q2は分析法バリデーションに関するガイドラインです。これは1990年代に合意されたものですが、30年近くぶりの改正という大きな節目に差しかかっています。また、新たにICH-Q14が合意されようとしており これは分析法の開発に関するものです。このように分析法バリデーションに関わるICHのガイドラインが大きく変わる時期であるために、「ゼロから学ぶ 分析法バリデーション」が刊行されたと思われます。
現時点で2つのガイドライン案は、各極におけるパブコメや寄せられた意見に基づく修正段階のようです。案(原文、和訳)や最新の進捗状況は下記を参照してください。

ICH-Q2 分析法バリデーション (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
ICH-Q14 分析法の開発 (同上)

 何が変わるの?
というわけで、「ゼロから学ぶ 分析法バリデーション」には、ICH-Q2の変更点と新設されるICH-Q14の内容が解説されています。主なポイントを紹介します。

・「分析法のライフサイクル」という概念の追加
・多変量分析法(近赤外分析など)に対応
・「特異性」は「特異性/選択性」に
・「直線性」「検出限界」「定量限界」は「稼働範囲」に
・「範囲」は「報告値範囲」に
・「頑強性」「システム適合性試験」はICH-Q14に

個人的には「報告値」という概念が新しいと感じました。これは、「測定値」が必ずしもそのまま報告されるわけではないからだそうです。言われてみれば確かに…と思います。

 食品分析や環境分析への影響は?
では、ICHにおける分析法バリデーションの変更は、食品分析や環境分析の分野にはどのように影響するのでしょうか?
ひとことで言えば、そんなにすぐに影響するわけではないと思います。ICHは医薬品の承認申請のためのガイドラインなので、直接関係があるのは製薬会社とその分析委託先です。いずれ日本薬局方に反映されるはずなので、そうなれば薬剤師の国家試験を受験する人も直接影響を受けるでしょう。
食品分析のGLPは厚労省の管轄ですし、薬品分析との技術的共通点も多い(ガスクロ・液クロが多用される、有機化合物の分析が多いなど)ので、日本薬局方が変わればそれに呼応した変更はあり得ると思います。環境分析はJISになっているものが多いので、薬局方は無関係と私は考えています。なお、私が知る限りJISに分析法バリデーションの規格はありません。(真度、併行精度、再現精度等の定義や求め方の規格はあります。)

 基本の解説もあり
ICHの変更点だけが解説されているなら読者対象はICHを熟知している人に限られそうですが、この本には「ゼロから学ぶ」と書名にある通り、変更点理解の前提となる基礎事項の説明があります。真度や精度の意味、統計の基礎(平均、標準偏差、母集団と標本、分散など)が書かれています。

 本を買うべき?読むべき?
それでは、この本を買うかどうか迷っている方のために、判断材料になりそうなことを書きます。書店で手に取ってみるのが一番ですが、それができない方は参考にしてください。なお、医薬品分析関係の方は職場で購入されるでしょうから、それ以外の分野を念頭に置いています。あくまで個人の見解です。

【買う価値がありそうな人】
〇分析法のバリデーションをする立場の人
〇分析法の論文を書く人
〇検量線の点数や精度評価の試行数をどうするか根拠がほしい人
〇分析法バリデーションに関する知識を整理したい人

【買うまでもないと思われる人】
ICH Q2(R2)案ICH-Q14案 を解説無しで理解できる人
△分析法のバリデーションをしない人
△自分の分野に波及してから対応すれば良いと思われる人

なお、ページ数のおよそ4割は「資料編」で、ここにはネットで無料公開されている文書が掲載されています。
ICH Q2(R2)分析法バリデーションガイドライン案(e-Govパブリック・コメント)
第十八改正日本薬局方第一追補

個人的には色々な情報を整理できて得るところが多かったです。このブログに書きたいトピックもあるので、おいおい記事にしていきます。

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2023.07.10

「ぶんせき」誌無料公開記事のPDFがある場所

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日本分析化学会の機関誌「ぶんせき」は、なかなか優れものの雑誌です。分析化学の基礎(サンプリングや各分析手法やデータの信頼性etc)から応用(環境や食品やバイオetc)まで、数ページから十数ページ程度の解説が毎月5報ほど掲載されています。ネットで検索しても得られない詳しい情報がまとめられ、しかも公式な文書に引用可能な文献の形で掲載されています。

私は10年ほど前に2年間「ぶんせき」の編集委員を務めさせていただきましたが、執筆依頼のたびに、各分野の専門家の方が実に快く引き受けてくださることに感心しました。分析化学会の歴史や信頼のなせるわざと思っています。

そういう「ぶんせき」ですが、過去分をまとめ読みしようとしたら、かなり参照しにくくなっていることに気づきました。再び探すのはちょっとたいへんなので、自分のメモのためにもどうなっているか書いておきます。

(1)2021年3号-現在の「ぶんせき」のウェブサイトはこちらです。
日本分析化学会機関誌「ぶんせき」
各号の目次が掲載され、伝統的に毎月一部の記事は無料公開されています。今後刊行される号もここに追加されていくと思われます。

(2)2019年1号-2021年3号の「ぶんせき」のウェブサイトはこちらです。
機関誌「ぶんせき」(アーカイブ)
残念ながら無料公開分の記事のみのリンク集です。目次が無いのでその他の記事のタイトルや著者はわかりません。

(3)1996年1号-2019年12号の「ぶんせき」のウェブサイトはこちらです。
「ぶんせき」目次
全記事の目次と無料公開分の記事へのリンクがあります。現時点ではバックナンバーのほとんどはこのサイトにあります。

利用者の立場からは、3か所に分かれているよりは、全期間分を(1)のウェブサイトで閲覧できる方が便利だと思います。現状では(1)には(2)と(3)の存在について全く書かれていないので、事情を知らなければ、2021年2号以前の「ぶんせき」のサイトに行きつけません。

ところで驚いたのが広告ページの多さ。(1)で無料公開されている解説記事のPDF冒頭には約15ページも広告が付いています。従量課金の環境下ではダウンロードしないように注意した方が良いと思います。ただ、このような広告は(1)の中の解説記事だけのようです。(1)の中の技術紹介やリレーエッセイ等、また、(2)(3)からリンクしている全てのPDFには広告は無いようです。

なお、分析化学会の会員は会員マイページから2001年1号以降の全てのPDFをダウンロードできます。(1)の期間の解説記事についても広告なしのPDFとなっています。

冒頭の写真は会員に配布された最後の冊子版の「ぶんせき」です。表紙左下には次号から電子版に移行する旨のお知らせが書かれています。ちょっと寂しい記念写真です。

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2023.06.25

分析化学会近畿支部 創設70周年記念式典

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日本分析化学会の設立は1952年ですが、近畿支部はその翌年、1953年に創設されたそうです。昨日70周年記念式典が開催されました。 現時点で 近畿支部のウェブサイト に掲載されているのは3月2日付けの案内のみで、ここには記念講演の演者名があるものの、詳細なプログラムは書かれていません。いずれ「ぶんきんニュース」等で詳しい内容が掲載されると思いますが、一足早くレポートします。

日本分析化学会近畿支部創設70周年記念式典
―未来につながる分析化学―

2023年6月24日(土)
大阪工業大学梅田キャンパスOIT梅田タワーにて

10:30-11:30 【プレ企画】常翔ホール前
 学生ポスター発表 27題

13:00-17:00 【記念式典】常翔ホール

1.開会式

2.記念講演
「異分野融合による分析化学の価値向上と国際社会への貢献」
 島津製作所 代表取締役会長 上田 輝久
「科楽のすすめ ―知ることとはかること―」
 紀本電子工業 代表取締役社長 紀本 岳志

3.パネルディスカッション
「分析化学の将来をどう切り開くか」
 進行役 辻 幸一 (大阪公立大学工学研究科)
 支部長 山本 雅博(甲南大学理工学部)
 パネラー
  森 良弘 (同志社大学ビジネス研究科)
  吉田 裕美 (京都工芸繊維大学工芸科学研究科)
  永井 秀典 (産業技術総合研究所)
  鈴木 雅登 (兵庫県立大学理学研究科)

4.学生ポスター優秀賞表彰式
 審査委員長 白井 理 (京都大学農学研究科)

5.閉会式

17:30-19:30 【懇親会】リストランテ翔21

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学会の支部の講演会に島津製作所の会長が!?
これにまず驚きました。上田会長のお話は、自身の経験から得てきた教訓、現在の島津の取り組み、パンデミックが社会を変えた世界史を振り返りつつ未来への展望、という流れでした。分析計測機器の世界市場規模は年間10兆円、島津のシェアは世界第8位だそうです。2026年に市場規模は14兆円になると予測されており、大きな市場というわけではないが確実に伸びているとのことです。世界企業らしい雄大なビジネスの話でした。

紀本社長は近畿支部の個性を表象しているような方で、「はかってなんぼ」のタイトルを考案された方です。100万年前に人類が道具を使い始めて以来の人類史を10万年前、1万年前、1000年前、100年前と対数目盛で俯瞰し、ギリシャ哲学者から現代の理論物理学者までの言葉を引きつつ、観測の重要性や基礎科学衰退への警鐘を語る内容でした。なかなか普段触れることのない教養です。ラファエロなどの絵に青いはっぴ姿の酔っぱらいが隠れている趣向でした。

パネルディスカッションは、最初に山本支部長から、支部会員の年齢層のピークが55~65歳にあり、若手を増やさなければ近い将来支部が衰退しかねない現状が報告されました。それを受けて、学会だけでなく分析化学そのものをどう発展させていくかについて話し合われました。
パネラーの皆さんの意見で共通していたのは、日頃自分が接する範囲の外の専門家と接する機会が欲しいということでした。その際、企業の専門家は対外発表のハードルが高いので、可能な範囲でしゃべれるような工夫が欲しいとか、くじ引きや席の近さでランダムに少人数で話せる場も良いとか、業務で参加すると情報収集が目的になるのでもっと自由に「妄想」を話せればとか、色々なアイデアが出ました。

懇親会で幅広い方々とお話ししました。私は2019年に東京へ転勤しましたが(東京へ転勤&国立衛研旧庁舎)、この春に近畿へ戻ってきました。近畿支部の行事に出席したのも久しぶりでした。しかし話を聞くと、私だけでなく近畿にずっとおられた皆さんもお互い結構久しぶりだったようです。新型コロナウイルス感染症の流行で対面の行事が制約された3年間、その制約が無くなって最初の大きな行事だったようです。
懇親会の締めくくりは恒例の紀本社長による「大阪じめ」でした。

森内実行委員長の発表によれば記念式典は143人、懇親会は104人の参加で、たいへん盛況だったようです。私がこれまでに参加した支部行事の中で一番大きかったと思います。

会場がまた素晴らしかったです。大阪工業大学の梅田キャンパスで、よくあるサテライトキャンパスではなく、高層ビルが丸ごとキャンパスだそうです。冒頭の画像は最上階のレストラン(懇親会場)から見下ろしたHEP FIVEの赤い観覧車です。梅田には高層ビルがいくつもありますが、観覧車を見下ろす眺めにははっとしました。
阪急ターミナルビルとヨドバシカメラとJR大阪駅がどんな位置関係にあるか、地上ではよくわかっていませんでしたが、俯瞰すると理解できました。写真を付けておきます。

この会場、一度は9月に記念式典の日程が決まって確保したのに、分析化学会年会と重なってしまったため急きょ6月に取り直したとのことでした。一等地の大人気の会場で、演者のスケジュール調整も含め、並々ならぬご苦労があったようです。これだけの企画を3カ月も前倒しとは、どんなに大変だったでしょう。タイミングとしては、先月新型コロナウイルス感染症が5類に移行したばかりで、解放感と祝賀ムードが一層盛り上がったように思います。

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2023.06.06

分けないのもまたクロマト

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先月島津本社で開催された「水道水質分析セミナー」を聴講しました。私自身は水道水の分析に携わったことはないのですが、おやっと思うことがありました。 今年度から水道水中の陰イオン界面活性剤の検査方法としてLC/MSが追加されたのですが、そのカラムの例としてはC18(1種類)以外にC8(2種類)が挙げられているとのことです。クロマトグラムを見ると、C18では分析対象である5種類の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)のピークが2本ずつ現れているのに対して、C8では1本になっています。LASの各同族体は異性体の混合物なのですが、分析目的に照らせばこれらの異性体を分離する必要はなく、C18で分けてしまうよりもC8で単ピークとして検出する方が解析処理が楽、分析時間も短い、とのことでした。 なるほど。分けるのがクロマトですが、あえて分けないのもまたクロマトだな…と思いました。

この検査法(厚生労働省の告示法)は2023年4月1日から適用されているそうです。

水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法等の一部改正について(施行通知)

国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部のサイトにQ&Aが掲載されています。

水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法 質疑応答集 (Q&A)

冒頭の写真は島津本社の建物の一つです。学生の頃、当時はまだ珍しかったLC-PDAを使わせてもらうため、教授に連れられて島津本社の工場を訪ねたことがありました。天井がとても高い、いかにも「工場」という感じの建物でした。あの建物とこの写真の建物が同じものかどうかはわかりませんが、懐かしく思い出しました。エントランスやホール付近には竹藪や庭園がしつらえられており、学生の頃とは全然違う世界企業の風格になっています。

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