2017.04.19

液クロの「HILIC」はどう略してこうなるのか

「ヒリック」は液クロのユーザーにとって一般教養といっていいほど普及してきました。

HILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー)は順相モードの一つです。古典的な順相が主に低極性の化合物に使われるのに対して、HILICは高極性の化合物に適しています。
私も普通のC18カラムを使う逆相で保持が不満という分析種でHILICを試してみたことがあります。その時は安定化までの時間に難があってルーチンへの採用にまで至りませんでしたが・・・

ところで親水性相互作用クロマトグラフィーの元の語はhydrophilic interaction chromatographyですが、これをどう略したらHILICになるのか?というのが今回のテーマです。

普通に略せば
Hydrophilic Interaction Chromatography
でHICとなります。

「LC/MS, LC/MS/MS Q&A100 虎の巻」には
HydrophILic Interaction Chromatography
の部分が略語の元であると書かれています。(p.131)

ネットで簡単に検索できる情報源としては

PC HILIC(資生堂)

HPLC基礎講座 第5回 分離モードとカラム(2)(日立ハイテクサイエンス)

が見つかりました。

日本工業規格の「JIS K 0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)」にもHILICの語は収載されていますが、残念ながらどの部分の略かは書かれていません。

ところで、これらの資料とは異なる情報が「LC/MS,LC/MS/MSのメンテナンスとトラブル解決」に書かれています。
hydropHILIC interaction chromatography
の部分が略語の元だそうです。(p.109)

そうか~!ここもHILICになってる!
と感心してしまいました。

この説に気づいたのはごく最近です。私の「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み 第2版」では第1刷で略語の由来を示していませんでしたが、増刷で多数派のHydrophILicを索引に書きました。
hydropHILIC説の信憑性は今後注意してみたいと思います。なんだか楽しい異説です。

ここで紹介した書籍の著者・刊行年・ネット書店リンク等はこちら
LC/MS,LC/MS/MS Q&A100 虎の巻
LC/MS,LC/MS/MSのメンテナンスとトラブル解決
LC/MS,LC/MS/MSの基礎と応用

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2017.04.11

増刷になります:「図解入門 分析化学の基本と仕組み」

ちょっと忙しくしていて7か月ぶりの更新になってしまいました。「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み 第2版」が増刷になります。ここ何週間かAmazonでも楽天ブックスでも品切れ状態でご迷惑をおかけしました。本館サイトに 増刷での修正箇所 のページを作りました。

分析化学に関する小ネタがいくつもたまっていますが、今日のところは修正箇所のページ作成で精一杯です。そこで私のブログでは異色の写真、相撲部屋の稽古風景です。

Sumo
これは3月の大阪場所の最中に、稽古場所の一つで撮影しました。ご多分に漏れず私の母が稀勢の里に夢中になりまして、相撲が見たいと言い出しました。しかしチケットの上手な取り方もわからず、普通に相撲協会のサイトで購入しようとしたら15分で売り切れました。それでも母は大阪へ来ましたので、稽古場所を調べて見学に行きました。

残念ながら稀勢の里の大阪宿舎の稽古場所は見学しにくい構造でした。この写真は日馬富士の部屋の稽古場所です。
実のところ私は相撲にまったく興味がなかったのですが、間近に稽古を見て、出入りする力士さんの大きさを至近距離で感じて、やっぱり迫力があるなと思いました。

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2016.09.06

「LC/MS, LC/MS/MS Q&A100 虎の巻」

Lcms
LC虎の巻シリーズ(2001年から2006年に刊行)は液体クロマトグラフィーの定番解説書です。このほどLC/MSについても虎の巻が出ました。

この本がどんな本でどんな人に合いそうか、ご紹介します。

LC虎の巻シリーズは「虎の巻」が入門編で「龍の巻」「彪の巻」…と内容が高度になっていますが、「LC/MS, LC/MS/MS Q&A100 虎の巻」は入門編ではありません。ある程度LC/MSに関する知識を持っている人向けの内容です。

2014年刊の「LC/MS,LC/MS/MSの基礎と応用」、2015年刊の「LC/MS,LC/MS/MSのメンテナンスとトラブル解決」に続く姉妹編の3冊目とのことです。
つまり、この虎の巻は前2冊の内容を理解している人向けと言えます。初学者の方にはまず「基礎と応用」を読むことをお勧めします。

何しろ、こういう質問から始まっています。

Q1 「エンドフィッティング」「カラム栓」などの呼び方をされる部品は、「カラム」に含まれるのでしょうか?

Q2 送液ポンプの「プランジャー」はメーカーによっては「ピストン」とも呼ばれているようですが、どちらが正しいのでしょうか?

単に分析手法としてLC/MSを見るのでなく、全編「LC/MS愛」にあふれています。

個人的には次の質問が「そうだったのか!」でした。

Q14 最近、「四重極型質量分析計」などの表現が「四重極質量分析計」などのように「型」が取れたものに変わっていますが、その背景・理由は何ですか?

Q4 「質量分析」と「質量分析法」は同じものを指すのでしょうか?

マニアックとも言える設問は前半に多く、後半は意外に基礎的な質問が並んでいます。

Q93 四重極質量分析計の原理
Q94 飛行時間質量分析計の原理
Q95 イオントラップ質量分析計の原理
Q98 「選択イオンモニタリング」とは?
Q99 「選択反応モニタリング」とは?

という具合です。

全100問の設問をネットで読めないかと探しましたが、残念ながら 出版社の書籍紹介 には大まかな目次だけが掲載されています。
上の例のような用語の厳密な解説が含まれていますので、多くの人には何問か「そうだったのか!」という設問と答えが見つかると思います。

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2016.08.10

質量分析のイオン化は「電離」と呼ばない?

何年か前のことですが、GC/MSについて話していた時に相手がイオン化のことを「電離」と言いました。

「質量分析では『電離』とは言いませんよ」
「じゃあ、なんて言うんですか?」
「イオン化と呼んでますね」

話し相手は、化学系ではあるが質量分析は専門外というかたでした。
質量分析をずっとやっている人は「電離」という言葉は思いつかないかもしれません。(少なくとも私はそうです。)

電子イオン化の場合は分子から電子がはじき出されてイオンになりますから「電離」とも言えそうですが、実用されるイオン化はどんどんソフト化していて、電子捕獲やプロトン付加など、何かがくっつくイオン化がメジャーになってきています。
「電離」の語はプラスのものとマイナスのものに分かれる意味になりますから、イオン化全体を包含できません。

ところで、誰が、いつごろ、「電離」という日本語を作ったのでしょうか?もともとはどんな語の訳語だったのでしょうか?

元の語がionizationだったとすると、「離」という漢字を使ってしまったのは残念だったのかもしれません。イオンになることを表すなら「電化」のほうが良かったかも?

そう考えながら「文部省 学術用語集 化学編 増訂2版」(1986)を紐解いてみました。
「電離」の項には2つの英語が書かれていました。
 電離 electrolytic dissociation
 電離【物理】 ionization

なるほど。化学では、NaClがNa+とCl-に分かれるような現象を電離と呼び、物理学ではイオン化を電離と呼ぶということですね。

同じ用語集で「ionization」も引いてみました。
 ionization イオン化【化学】
 ionization 電離【物理】
とありました。

どうやらionizationを電離と訳すのは物理学の分野のようです。物理学では何かがくっついてイオン化する現象をあまり扱わないのかもしれません。だから「電離」で良いのかもしれません。あくまで想像ですが。

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2016.07.23

「分析化学のおすすめ本」について

7年前からはてなダイアリーを使って 分析化学のおすすめ本 を公開しています。これは化学分析の実務にたずさわる方のための入門書を私なりに努力して選んだものです。

最新の分析機器・分析手法ほど進歩のスピードは速く、高価な書籍を購入しても情報は古くなってしまいます。一方で、分析機器メーカー・試薬メーカー・学会などが提供する無料のセミナーやウェブ情報がかなり充実してきています。

そのため 「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み 第2版」 では、これらの無料情報の利用を勧め、参考文献としては基本的に各分析法の日本工業規格(JIS、無料で閲覧できる)を挙げています。(掲載したJISのリスト

でも独学で各分析法の原理や利用法や注意点を包括的に学びたい場合、やはり書籍は有効な媒体です。たいていの執筆者は各分析法のユーザーでもありますから、ユーザー視点での使用感や注文が書かれていたりして、実感のわく知識が得られます。

そういうわけですから、真剣に勉強したいと思った分野についてはぜひ1冊は本を購入してください。そして、積ん読するのでなく、流し読みでもいいからできるだけ早く目を通すことをお勧めします。情報が一番新しいのは買ったその時なので。

分析化学のおすすめ本 の作成方針は次のとおりです。

1.分析実務に携わる人向け
 分析装置の開発や分析原理の研究等をする人向けではありません。コメントも実務の観点から付けています。

2.刊行日の新しいものから順に表示
 Amazonが記載している発売月(日)または奥付の日付の順に表示しています。発売月までの情報に基づいたものは日付が「00日」になっています。

3.右サイドバーに「カテゴリー」を表示
 「よくわかる分析化学の基本と仕組み」の目次に対応したカテゴリー分けをしています。ここをクリックすれば「前処理」「質量分析」などのカテゴリーごとの本を探せます。

4.「よくわかる分析化学の基本と仕組み 第2版」でおすすめした書籍には のタグを付けています。入門書が2冊以上ある場合は使いやすさや記載項目で選びました。入門書が1冊しか出版されておらず選ぶ余地がなかった分野や、入門書が1冊もなくて高度な書籍を選んだ分野もあります。

5.各々の紹介記事には自動的にAmazonの商品ページへのリンクが挿入されています。

(この記事は2009年8月16日作成の 「分析化学のおすすめ本」を公開 を大幅に修正して作成しました。)

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«「よくわかる最新分析化学の基本と仕組み」の参考情報リンク集