国立衛研創立150周年&旧庁舎跡地
厚生労働省の研究機関である国立医薬品食品衛生研究所は、明治7年(1874年)に「東京司薬場」として発足しました。日本で最も古い国立試験研究機関だそうです。今年は創立150周年に当たるため、いくつかの行事が催され、10月18日に締めくくりのシンポジウム・記念式典・祝賀会が開かれました。公式サイトはこちらです。
私は1987年から2003年まで国立衛研大阪支所に勤務したOBとして、10/18の一連の行事に参加しました。記念式典と祝賀会は非公開だったのでここに書くのは控え、シンポジウムについてのみ書きます。
記念シンポジウム「創立150周年を迎えた国立衛研のレギュラトリーサイエンス 最新動向と展望」はライブ配信されました。アーカイブ動画は引き続きYouTubeで公開されています。
創立150周年を迎えた国立衛研のレギュラトリーサイエンス 最新動向と展望(YouTube)
シンポジウムの構成は、①川西徹名誉所長による150年間の歴史紹介、②本間所長による研究所の現状紹介、③室長4名による最新研究の紹介、というものでした。
川西名誉所長の講演によれば「レギュラトリーサイエンス」の語は元々海外にあったそうですが、日本国内で現在のように使われた初出は、なんと労働組合の機関紙だったそうです。1987年に、後の内山充所長(第21代)が「衛試支部ニュース」紙上で提唱されたそうです。
このことも含めてシンポジウムでは「レギュラトリーサイエンス」について多く語られ、改めてこの概念が現在の国立衛研の指針になっているのだなと感じました。
国立衛研が社会的に注目された最近の事件といえば、紅麹含有サプリメントによる健康被害の原因究明です。これについては本間所長の講演で取り上げられました。上記リンクの動画の中で、国立衛研の取り組みのまとめは1:37:27から2分間程度、詳しい分担状況は各部紹介の中で、1:14:50付近から約16分間述べられています。
健康被害の原因物質究明・プベルル酸の大量合成・動物実験・既存文献の調査など、化学分析も有機合成も毒性試験も情報部門もそろっている研究所だから迅速に連携して対処できたことがわかりました。
国立衛研は2017年に世田谷区から川崎市へ移転しましたが、旧庁舎の正門脇にはメタセコイアの木がありました。かつて大阪支所にもメタセコイアの木があり、それは本所のメタセコイアの予備だと言われていました。なぜそんなにメタセコイアが大事にされるのか不思議でしたが、実は創立100周年の記念に常陸宮ご夫妻により植樹された木だったと、初めて知りました。
そのメタセコイアは落雷のために腐食し、川崎への移植は断念されたそうですが、労働組合支部(旧)の残資によって幹の一部がモニュメントとして残されたそうです。それはエントランスに置かれていました。また、同様に切り出された木材から作られたメモスタンドが、記念式典参加者に記念品として配られました。
その旧庁舎跡地についても書いておきます。私が2019年に旧庁舎を訪ねたときにはまだ建物や樹木はそのまま残っていました。
東京へ転勤&国立衛研旧庁舎(2019.05.12)
今回のシンポジウムが始まる前にまた行ってみました。建物も樹木もすっかり取り払われてフェンスで囲まれていました。現在は東側擁壁撤去解体作業中だそうです。見た目はほぼ更地ですが、シンポジウムでの本間所長の講演によれば、まだ埋蔵物(文化遺産ではない)の撤去があるため、工事完了は令和9年の見込みだそうです。
その後に何ができるかについては、お話はありませんでした。
工事車両が大きなゲートを出入りしていました。
工事期間を知らせる看板。
ほとんど更地に見えますが、辺縁部の樹木は少し残されている?(南側より)
完全な平地ではなく、少し高低差があるようです。(西側より)
郵政創業150年(2021)、鉄道開業150年(2022)、気象業務150周年(2025)など、明治1桁から150年に当たるここ数年は○○150年が続きます。数えればきりがないでしょうが、その一つの祝賀行事に参加して、西洋式の近代化に尽力した先人へと、私も思いを致すことができました。
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